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境界型糖尿病とはどんな状態なのか。すぐに糖尿病になってしまうの?

 

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■境界型糖尿病とは

 境界型糖尿病とは、ごく簡単にいえば、血糖値の状態が「正常」とはいえないまでも、糖尿病の合併症である糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症を即座に心配しなければならないほど高くはないので糖尿病と診断することはできない状態にあることをいいます。

 「糖尿病予備群」という表現がありますが、これも境界型糖尿病と同じことです。したがって、「境界型」というのは、病名ではなく検査上の区分です。正常・要注意・不良の中の「要注意」と同じだと理解すればわかりやすいでしょうか。

 具体的には、空腹時血糖が110mg/dL~125mg/dL、食後2時間血糖(75g経口ブトウ糖負荷試験で判定されます)が140mg/dL~199mg/dLの片方もしくは両方に属する場合に境界型糖尿病と判定されます。

■境界型糖尿病は安全なのか?

 境界型糖尿病と判定される段階では、いわゆる糖尿病の三大合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)を発生する確率は高くないといわれています。ただ、それは「放置しておいてよい」ということではありません。境界型糖尿病と判定された人は何も生活上の改善をしなければ糖尿病と診断される確率の高いからです。

 また「正常」と判定されている人であっても、空腹時100mg/dLを超える場合(正常高値)には、それ以下の場合に比べ糖尿病リスクが2倍以上となるという統計データもありますから、決して油断してはいけません。特にメタボリックシンドロームと診断されている人の場合には、血糖値としてははっきりと現れていなくても、既に体内でインスリンが作用しづらい(インスリン抵抗性が高いと言う)状態になっている可能性が高いので、注意が必要です。

 境界型糖尿病(もしくは正常高値)の人にとって、糖尿病発症以上に危惧すべきは、境界型の人であっても、「動脈硬化が進行しやすい傾向が認められる」ことです。動脈硬化とは、簡単にいえば血液の流れが悪くなっていることをいいますが、これを放置しておくと、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血を引き起こす可能性が高くなり大変危険です。

 境界型糖尿病と判定された人のうちでも、食後血糖値が高い人は「グルコーススパイク」の懸念もありますから、特に注意が必要です。グルコーススパイクとは簡単に説明すると血糖値のジェットコースター現象です。「急上昇して、その後、天井から急速に落ちる」。これが起こると血管に傷が付きます。そうすると動脈硬化が進行し、心筋梗塞などを引き起こす危険性があります。

 ですので、「境界型糖尿病」という判定がわざわざ設けられているのも、早期に対応することが重要であるからにほかなりません。サッカーで言えば「イエローカード」です。

[グルコーススパイクについての参考記事]
「グルコーススパイク(血糖値の急上昇と急低下)とは」

■慢性高血糖の初期症状としての境界型糖尿病

 ここで糖尿病がどのように進行するか確認しておきましょう。糖尿病と呼ばれる状態は、言い換えれば「慢性の高血糖」です。血糖コントロールの悪化は、食後高血糖から慢性の高血糖へと進行していきます。

 食後高血糖が生じるとそれを解消するために、普段より多くのインスリン分泌を必要とすることになります。それは当然にすい臓にとっては大きな負担であり、過食が続くなどしてそれが繰り返されればその疲労は蓄積していきます。

 また、インスリンの過剰な分泌は中性脂肪の蓄積を促しますから、その脂肪がインスリンの効き具合をさらに悪くします。そうすると普段の血糖コントロールの場面でも今まで以上に多くのインスリン分泌が必要となり、すい臓にさらなるダメージを与えます。そのすい臓の疲労が限界を超えるとインスリンの出が悪くなります。いわば急性の高血糖である食後高血糖が慢性の高血糖(糖尿病)へと進行していくのです。

 ですから、私たちの体は、糖尿病になる前に食後高血糖(グルコーススパイク)という形でサインを発しています。すい臓は「俺をそんなに働かせるな。過労死するぞ。ここはブラック企業か?」と訴えているわけです。しかしながら、ほとんどの人にとっては、食後血糖値を目にする機会がまずありません(特定健診で計測するのは空腹時血糖です)。

 さらに、食後に眠くなるといったような食後高血糖(グルコーススパイク)の諸症状があったとしても、知識がなければ、それが血糖コントロールの不良によるものであるとは気づけないわけです(「満腹になったら眠くなるのは当たり前」だと思っている人は多いのではないでしょうか)。その結果、多くの人が、「境界型糖尿病」と判定されること(目に見てわかる検査結果)で、初めて高血糖の問題に気づくことになるのです。

 大切なことなので繰り返しになりますが、境界型と判定されたということは、すでに空腹時血糖がいわゆる「平常(高値)よりも高い状態」になっていることを意味しています。それはすなわち、既に「慢性高血糖(糖尿病)への進行がはじまっている」というサインでもあり、合併症発症の心配を始めるべき段階にさしかかっているということなのです。

■終わりに―まだ間に合う―

 ここまで説明してきましたように、境界型糖尿病(糖尿病予備群)と判定されたときには、このまま放置しておくと血糖コントロールが乱れるのではなく、「すでに体内の血糖コントロールは乱れ始めている」のです。

 「予備軍だからまだ大丈夫」と安心するのではなく、まずは75gブドウ糖負荷試験を受けるなどしてご自身の血糖コントロールの状態を正しく把握するべきでしょう。その上で、運動・食事の習慣を見直すことが大切です。実際に、境界型糖尿病と判定された場合であってもその後に生活習慣(運動・食事)の見直しを実施することで、糖尿病発症リスクを50%以上軽減できるとの統計データもあります。

 また近年では、境界型糖尿病と判定された人がいわゆる血糖値降下薬(αグルコシターゼ阻害薬)を服用することで、糖尿病リスクが減り、高血圧や動脈硬化による心臓病・脳卒中の発症リスクも減ることが明らかになっています。ですが、薬を飲む前にできることが食事の徹底管理です。具体的には糖質量を減らすことです。血糖値を上げるのは糖質だけですので、できれば糖質制限食を食べるといいでしょう。

[参考記事]
「糖質制限食(低炭水化物食)における糖質1日の必要量」

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