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糖尿病の治療に使われる薬にはどんな種類があるのか

 

 糖尿病の治療の基本は食事と薬です。この2つの治療を組み合わせることで血糖値を良好にコントロールします。今回は、薬物療法で使用される「内服薬」と「注射薬」に焦点を当てて詳しく解説していきます。

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インスリンの分泌を促進させる薬について

 インスリンは血糖値を下がりすぎも、上がりすぎもしないように常に一定量が分泌されておりますが、これを基礎分泌と言います。そして、食事をして血糖値が上昇すると(基礎分泌だけでは足らなくなるため)インスリンが追加分泌され、血糖値を下げる働きをします。血糖値が下がるということは血液中のブドウ糖が減るということですが、これはブドウ糖をエネルギーとして使用したり、(ブドウ糖を)脂肪として筋肉や肝臓に蓄えているためです。この仲介を行っているのがインスリンです。

<スルホニル尿素剤(SU剤)>
 インスリンの分泌は糖尿病が進行してくると少なくなってきます。膵臓が働き過ぎでインスリンを分泌する力を失っているからです。そうなると薬の力が必要になるケースもあります。

 インスリンの分泌を促進させる薬は、インスリンの分泌量が減少し血糖値が高い人に使用される薬です。膵臓を酷使し、無理やりインスリンの分泌を促します。ですので長期間使用すると、すい臓のβ細胞が疲れてしまい薬の効果が減少してしまうこともあります。

 スルホニル尿素剤(SU剤)はインスリンの量を増やすよう膵臓に働きかけ、1日の血糖値の変動値を低く保つよう作用します。商品名としては「アマリール」「オイグルコン」「グリミクロン」などの薬があります。作用時間が長く、アマリールは最大12時間、オイグルコンとグリミクロンは最大24時間です。

 スルホニル尿素剤は作用時間が長いため、それだけ膵臓に負担をかけ、将来的に血糖値が下がりやすくなるというデメリットがあります。糖尿病と分かるまで散々膵臓に負担をかけている上に、さらに薬で追い打ちをかけるわけですので、長い目で考えるとあまり飲むのを推奨できません。

 さらにスルホニル尿素剤のデメリットを書くと、空腹時の血糖値が下がりやすくなることが挙げられます。血糖値は下がりすぎても低血糖状態になり良くありません。また、食事で糖質を摂る場合には血糖値はかならず上がりますが、その高血糖の状態を改善する効果も弱いことが問題点として知られています。

<グリニド剤>
 グリニド剤もスルホニル尿素剤と同じく、すい臓からインスリンを増やすよう働きかける薬です。商品名としては「ファスティック」「グルファスト」「スターシス」などの薬があります。速効型インスリン分泌促進剤ですので、作用する時間は3時間くらいと短いのが特徴です。そのため、膵臓の負担という点ではスルホニル尿素剤よりもマシです。

 内服から食事まで時間が空くと、低血糖を起こすことがあるため、内服後すぐに食事をする必要があります。

インスリンを効きやすくする薬について

 高カロリーの食事や運動不足により脂肪が増えてくると、インスリンが通常通り分泌をしているのにも関わらず効果が弱くなることがあります。すると、血糖値が高い状態でも、効果的に血糖値を下げることができなくなってしまいます。この状態を「インスリン抵抗性」といいます。このインスリンの抵抗性を改善し、血糖値を下げる働きのある薬を紹介します。

<チアゾリジン誘導体>
 チアゾリジン誘導体は脂肪に働きかけることで(脂肪を小さくする)インスリン抵抗性を改善し、糖分が効率よく使用されるようになるため、結果として血糖値が低下します。代表的な薬は「アクトス」です。体重の増加やむくみやすいという副作用があるため、心臓に病気がある人には使用できません。また、膀胱癌の副作用があるとのことで、ドイツやフランスでは使用されていません。

<ビグアナイド類>
 この薬はインスリン抵抗性を改善する効果に加え、肝臓でブドウ糖が作られることを防ぐ働きがあります。そうすることで、血糖値を効率よく下げることが可能になります。代表的な薬は「グリコラン」「メルビン」などです。

 この薬にはインスリンの分泌を促す作用がないため、低血糖の心配は少ないと言われています。しかし、腎臓の機能が低下している人や高齢者には使用できません。

<α-グルコシダーゼ阻害剤>
 糖質を摂取すると、α-グルコシダーゼにより単糖類(ブドウ糖)にまで分解されます。この働きを阻害するのが「α-グルコシダーゼ阻害剤」です。商品名は「グルコバイ」「ベイスン」「セイブル」などがあります。

 糖の分解を遅らせることで、食後の血糖値はゆっくりと上昇するようになります。それによりインスリンの効果も高くなり、血糖値は急激には上がらなくなります。食事の直前に内服することで効果が発揮されます。

 この薬によりがおなかのガスが増えるため、おならが出やすくなる人もいます。また、単独で使用した場合は低血糖の心配は少ないのですが、他の糖尿病薬と一緒に使用した場合は低血糖に注意が必要です。

糖の排出を促す薬について

 血糖値を上げる糖を尿と一緒に出すという考えから「SGLT2阻害薬」が開発されました。これにより血糖コントロールがよくなり、体重の減少なども期待できます。しかし、尿量が増えるため体の中は脱水状態となり、脳梗塞などを引き起こすことがあるため注意が必要です。商品名は「スーグラ」「フォシーガ」などがあります。

インスリン製剤について

 1型糖尿病の人は、インスリンの分泌が非常に少なかったり全く分泌されていないため、インスリンの注射が不可欠となります。

 2型糖尿病は、生活習慣や食習慣が原因となり発症した糖尿病です。2型糖尿病の人でも上記の薬や食事、運動で効果が得られない場合にはインスリンの注射が必要となります。

 インスリン製剤には効果の出るタイミングによりいくつかの種類があります。ペン型のインスリンの注射器を使用し、決められた量を決められたタイミングで自分で注射することができます。

<超速効型インスリン>
 食後の高血糖を改善する目的で使用されます。メーカーによって違いますが、注射後10分や15分くらいで効果が現れ、最大で5時間効果が続きます。効果が出るまで短時間であるため、食直前に注射する必要があります。「ノボラピッド」「アピドラ」「ヒューマログ」などがあります。

<速効型インスリン>
 食後の高血糖を改善する目的で使用されます。メーカーによって違いますが、注射後30分くらいで効果が現れ、7時間、8時間効果が続きます。「ノボリンR」「ヒューマリンR」などがあります。

<中間型インスリン>
 常に分泌されているインスリンの量を補い、空腹時の血糖値の上昇を予防する効果があります。メーカーによって違いますが、注射後1時間くらいで効果が現れ、最大で24時間効果が続きます。「ノボリンN」「ヒューマリンN」などがあります。

<混合型インスリン>
 超即効型・即効型・中間型のインスリンを、様々な配合で混ぜて作られたインスリンです。常に分泌されるインスリンの量を補い、更に食後の高血糖も予防する効果があります。配合により効果の出る時間や持続時間に違いがあります。「ヒューマログミックス25注ミリオペン」「ノボラピッド30ミックス注フレックスペン」などがあります。

ノボラピッド30ミックス注フレックスペンは、超速効型インスリンアナログと中間型インスリンアナログを3:7の割合で含有する混合製剤である。

作用発現時間10~20分
最大作用時間1~4時間

<持続型インスリン>
 血糖コントロールの状況に応じ、決まった時間にインスリン注射をすることが難しい人などに使用されます。持続型インスリンには「ランタス」「レベミル」「トレシーバ」などがあり、だいたい効果がでるまで1時間かかり、1日持続します。

最後に

 糖尿病は「食事療法」「運動療法」「薬物療法」の3つを組み合わせて治療します。中でも食事療法と運動療法は大切な治療です。食事療法と運動療法に取り組んでも血糖コントロールを良好に保てない場合には薬物療法を行います。薬が開始になっても、食事・運動療法は継続します。基本の3つの治療方法を守り、血糖コントロールを良好に保つことができるように努力する必要があります。

[参考記事]
「糖尿病はどのような病気なのかを詳しく解説」

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