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空腹時血糖値が正常でも「正常高値」に注意せよ

 

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■血糖値の種類

 血液中のブトウ糖のことを血糖といいますが、この血糖の量を示した値が血糖値です。通常、血糖値は、「mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)」という単位によって、「血液1dLあたりのブドウ糖量(mg)」で示します。この血糖値は、その測定のタイミングによって、「空腹時血糖値」と「食後血糖値(随時血糖値ともいいます)」に分けられます。

■特定健診で測定されるのは空腹時血糖

 特定健診を受ける際には、検診日の前日の夕食後から検診までの間の食事を控える(朝食を抜く)ことが一般的ですが、それは「空腹時血糖値」を測定するためであるわけです。血糖値それ自体は、飲食による糖の摂取により、一日の中で変動するものです(日内変動といいます)。血糖値測定前に食事を摂ったのでは、その食事を摂った時間や種類・量によって測定される血糖値に大きなばらつきが生じてしまいますから、健康状態を判断するための検査としては適切ではありません。

 そこで、血糖の状態が最も安定している空腹時の血糖を測定するというわけです。なお、この空腹時血糖値は、70mg~109mg/dLが正常値(血糖コントロールに問題のない状態)であるとされています。しかし、この空腹時血糖値が100mg/dL以上となる(100~109mg/dLを正常高値といいます)と糖尿病の発症リスクが高くなることから、特定保健指導の対象となります。つまり、空腹時血糖値が「正常」だからと言って「正常高値」の場合、安心はしていられないということです。

■空腹時血糖値をみる際の注意

 空腹時血糖値は、血糖コントロールを計測する指標としては最も便利で安定したものと言えるわけですが、食事を摂らない(糖を摂取していない)状態であっても、ストレス等によってアドレナリンや甲状腺ホルモンが分泌されることによって血糖値が上昇することがあります。

 また、医療機関で血糖値を測定する際には静脈血を使いますが、自己血糖測定(SMBG)を行う際には、指先等の毛細血管から血液を採取することの方が一般的です。この場合の血糖値は静脈血の血糖値よりも10~20mg/dLほど高くなる場合があります。

■空腹時血糖値だけで安心してはいけない

 糖尿病と呼ばれる状態は、言い換えれば「慢性の高血糖」です。特に、特定健診で測定される血糖値が高いということは、「空腹時(糖を摂取していない状態)でも血糖が高い」ということですから、それこそ慢性的に血糖値が高い状態にあるということです。「特定健診で血糖値がちょっと高いと言われたけど、『ちょっと』高めなだけだから大丈夫」というようなことを言っている方は割と多いのではないかと思いますが、これは必ずしも正しくありません。

 ここでどのようにして糖尿病になっていくのかというプロセスをごく簡単に確認しておけば、次のようになります。

・糖の過剰摂取
     ↓ 
過食状態が継続することで、食後高血糖が続き、インスリンを過剰に分泌する必要がある。その結果、インスリンを分泌するすい臓の疲労が溜まる
                        ↓ 
・食べすぎやインスリンの分泌により中性脂肪が溜まり、「インスリン抵抗性(インスリンが作用しにくい状態)」が増大し、血糖値が下がりにくくなる(インスリンは脂肪を溜める役割がある)
     ↓ 
・空腹時血糖値の上昇(血糖値が高めと指摘される=慢性的高血糖のはじまり)
     ↓ 
・生活を改めないでさらにすい臓を働かせることで、疲労が溜まり、機能が低下する。よってインスリンの分泌不足になり、糖尿病を発症

 以上のように、血糖コントロールの悪化は、食後高血糖から慢性の高血糖へと進行していくので、特定健診で測定される空腹時血糖値が高めということは、すでに慢性的な高血糖が始まっていると考えるべきなのです。

 ですから、この段階では、「まだ大丈夫」なのではなく、これからも健康的な生活を送り続けるために、高血糖の改善、すなわち生活習慣(食事と運動)の見直しを始めなければならない状態だと認識するべきなのです。

 この高血糖が生じるプロセスを念頭におけば、まず警戒するべきなのは、糖尿病の原因を作る「食後高血糖」なのです。この食後高血糖は、糖尿病ではない正常値の人でも、糖質を大量に摂った時には起こることですが、これが動脈硬化等の原因となることが分かっています。簡単に説明すると高血糖状態が血管を傷付けてしまい、それが動脈硬化に繋がってしまうのです。そうすると最終的には脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気になりますので、高血糖状態を甘く見てはいけません。

 ですから、まずは食後高血糖を回避することがとても重要です。しかし、食後高血糖が生じているか否かを判定するためには、75g経口ブドウ糖負荷試験や血糖自己測定を行う必要がでてきますので、かなりの手間がかかります。ですので、血糖値が正常の人は大抵やらないでしょう。

 しかし、空腹時血糖値が正常でも、「正常高値(100~109mg/dL)」に属する人は食後高血糖が生じやすいと考えて、より気を付けましょう。特に、メタボリックシンドロームを疑われる人の場合であれば、食後高血糖が既にはじまっている可能性は、そうではない人よりも当然に高くなりますので、正常高値と判定されたことを、生活習慣(食事と運動)を見直す良いきっかけとすることが大切です。

[参考記事]
「境界型糖尿病とはどんな状態なのか。すぐに糖尿病になってしまうの?」

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