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糖尿病はどのようなプロセスをたどって診断されるのか

 

 この記事では糖尿病と診断を受けるまでにはどのような過程をたどるのかを説明します。

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■糖尿病の診断に用いられる数値

 糖尿病の診断には、以下の数値が用いられます。

 ①空腹時血糖値

 ②OGTT2時間値(75g経口ブドウ糖負荷2時間値)

 ③随時血糖値

 ④HbA1c値(ヘモグロビン・エーワンシー値)

 血糖値は、血液中にどれくらの糖質が含まれているのかを数値化したものです。通常、私たちの体はこの血糖が一定に保たれていますが、この血糖をコントロールする機能が不良となることが糖尿病ということです。

 ですから、血糖値を測定することは、糖尿病診断とって非常に重要なものです。

 上記の①から④について説明しますと
①検査前日の夕食後から翌朝の検査終了までの間食事を抜いた(=糖を摂取していない)状態で行われる空腹時血糖値の測定

②75gのブドウ糖を経口摂取した2時間後の血糖値の測定

③食後任意の時間での血糖値の測定

④については、糖と結合したヘモグロビン(これをHbA1cといいます)の量を測定します。HbA1cの値は、おおむね「検査前1~2ヶ月程度の血糖状態」を把握するためにこの値の判断が用いられます。

 血糖値が高くなる原因はインスリンの作用不足か、インスリンの分泌が十分ではないことです。インスリンの作用不足の原因の一つはインスリンの量は十分あるのに、中性脂肪が邪魔をしてしまうためです。そうするとすい臓は血糖値が下がらないものだから、もっと分泌しようと頑張ってしまいます。そうするとすい臓が疲れてきて、インスリンの分泌そのものが弱くなってきます。これが糖尿病へと繋がるのです。

■糖尿病の基準値

 血糖値は診断の目安となる基準値が設けられています。このサイトの他の記事でまとめた数値がありますので、それを引用します。

 ちなみに「境界型」とは文字通り、正常と糖尿病の境目で、いつ糖尿病と診断されてもおかしくない状態です。よほど、食生活に気を付けないと糖尿病になるケースが多いです。

[正常型]
①空腹時血糖値
=>110mg/dl未満

②食後2時間血糖値(75g経口ブトウ糖負荷試験で判定)
=>140mg/dl未満

③HbAlc値
=>5.6から5.9%

[糖尿病]
①早朝空腹時血糖値
=>126mg/dl以上

②食後2時間血糖値(75g経口ブトウ糖負荷試験で判定)
=>200mg/dl以上

③HbAlc値
=>6.5%以上

[境界型]
①空腹時血糖値
=>110mg/dL~125mg/dl

②食後2時間血糖値(75g経口ブトウ糖負荷試験で判定)
=>140mg/dl~199mg/dl

③HbA1c値 6.0%から6.4%

■糖尿病診断のプロセス

 初回検査で例えば血糖値の測定結果が130mg/dL、HbA1c値が5.8%で、血糖値だけが糖尿病型と判定されただけでは、糖尿病とは診断されません。その場合、再検査でもう一度調べてもらって、そこで判断をされます。

 以下、糖尿病の診断プロセスについて整理します。糖尿病学会が発表している指針がありますので、それをそのままご紹介します。

(1)初回検査

●血糖値とHbA1c値が「共に糖尿病型」であった場合
=>糖尿病と診断される

●「血糖値が糖尿病型」で「典型的な糖尿病症状」(※)もしくは「確実な糖尿病性網膜症の症状」が確認できるとき
=>糖尿病と診断される

●血糖値とHbA1c値の「いずれかのみが糖尿病型」であった場合
=>再検査(A)。下の「(2)再検査A」を参考に

●「HbA1c値のみが糖尿病型」であった場合
=>再検査(B)下の「(3)再検査B」を参考に

(※)典型的な糖尿病症状とは、口渇、多飲、多尿、体重減少の症状をいいます。

(2)再検査A

(初回検査から1ヶ月以内の再検査が強く推奨されています)

●血糖値とHbA1c値が「共に糖尿病型」であった場合
=>糖尿病と診断される

●血糖値とHbA1c値の「いずれかのみが糖尿病型」であった場合
=>糖尿病と診断される

●血糖値とHbA1c値が「共に糖尿病型ではなかった」場合
=>糖尿病の疑い(※)

(※)糖尿病の疑いとの結果となったときには、経過観察後(3~6ヶ月程)に、血糖値とHbA1cについて再検査をすることが強く推奨されています。

 (3)再検査B

(必要的な再検査とされています)

●血糖値とHbA1c 値が「共に糖尿病型」であった場合
=>糖尿病と診断される

●「血糖値のみが糖尿病型」であった場合
=>糖尿病と診断される

●「HbA1c 値のみ糖尿病型」であった場合
=>糖尿病の疑い(※)

●血糖値とHbA1c 値が「共に糖尿病型ではなかった」場合
=>糖尿病の疑い(※)

(※)糖尿病の疑いとの結果となったときには、経過観察後(3~6ヶ月程)に、血糖値とHbA1cについて再検査をすることが強く推奨されています。

■診断基準や診断過程に関して注意するべきこと

①以上の糖尿病の診断基準を適用する上では、血糖基準値のみを金科玉条とすべきではないということがよく言われたりします。実際の診断は、家族の中に糖尿病患者がいるかどうか(遺伝)など総合的に判断をします。

 また、ここで紹介した診断基準は、多くの患者に適用しやすい非常に便利な指標なのですが、他方で安易な一律判断がなされやすいという危うさもあります。まだ、インスリンの分泌能力があるのに、インスリン製剤で治療しようとするケースもよく耳にします。

②日本人は一般的に食後高血糖に陥りやすい傾向にあるとよくいわれますが、OGTT2時間値だけで血糖値の判定を行った方が、空腹時血糖だけの判定よりも糖尿病型と判定される頻度が高くなることがいわれています。

 このことは、空腹時血糖値によるスクリーニングだけでは把握することの困難な、いわゆる「隠れ糖尿病」が多いことを示唆しています。たとえば、空腹時血糖値は高くないのにHbA1cだけが高いというような場合には、食後高血糖によってHbA1c値が押し上げられていることが推測されるのです。

③糖尿病は慢性症状の問題です。ですので、上で紹介した診断プロセスにおいて、それぞれの段階で再検査が強く推奨されているように、糖尿病型ではないと診断された方であっても継続的な観察を続けることが大事です。会社員であれば定期健診で、一般の方であれば国民健康保険の提供する国民健康診査を行うのがいいでしょう。

 そして早期の段階(糖尿病と診断される前)から高血糖を招かない生活を心がけることが何よりも大切です。

[参考記事]
「糖尿病とはどんな病気か。基準値、合併症、予防など」

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