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糖尿病と肥満の関係、インスリンと肥満の関係を解説します

 

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肥満とは

 糖尿病と肥満が密接に関係していることはよく知られていますが、まず肥満について確認しておきましょう。体重が増加したということだけでは、肥満ではありません。

 肥満かどうかは体内にどれだけ脂肪があるのかで決まってきます。体脂肪を正確に計測するには水中体重測定法という「体を水中に完全に沈めたときの体重と大気中での体重から身体密度を計算して測定する方法」がありますが、大がかりな設備が必要となるので簡便な方法とはいえません。

 最近では体脂肪測定のできる体重計も市販されていますが、おおよその目安となる測定はできますが、必ずしも正確なものではありません。そこで、便宜上、BMI(体格指数:body mass index)と呼ばれる指標がよく用いられます。このBMIは以下の計算式で求められます。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

 このBMI=22を標準として、18.5未満を痩せ形、25以上を肥満と判定します。BMIが27(身長170cmの方であれば78kg)以上になると糖尿病発症リスクが2倍になるともいわれます。

 さらに、ウエスト周囲径が男性で85cm、女性で90cm以上の人は、内臓脂肪型肥満が強く疑われます。BMIが25以上でウエスト周囲径も上記の数値以上である場合には、メタボリックシンドロームにも該当する可能性がかなり高く、糖尿病のリスクはさらに高まります。

インスリンと肥満の関係性

 インスリンというホルモンが糖尿病の重要な鍵を握っていることは、一般的によく知られていることです。ダイエットに強い関心を持っている方であれば、「低インスリンダイエット」という言葉をきいたことがあるかもしれませんが、実はこのインスリンは、「肥満ホルモン」といわれることがあるように、肥満それ自体とも密接な関係があるのです。

 私たちが食事によって糖を摂取すると、すい臓からインスリンが分泌されますが、そのインスリンの働きにより糖を骨格筋細胞などに取り込ませることで代謝させようとします。そうすると細胞に取り込んだ糖質の分、血糖値は下がる仕組みになっています。

 しかし、糖の摂取が多すぎるときには、そこで代謝しきれなかった糖はグリコーゲンとして筋肉などに蓄えられ、それでも余った場合には脂肪細胞に入ります。最終的に脂肪に変えて蓄えることで血糖値を一定にコントロールするのです。これがインスリンを肥満ホルモンと呼ぶ理由です。

 また、脂肪が必要以上にため込まれるほどにインスリン抵抗性が高くなります(つまり、インスリンの効きが悪くなるということ)。そうするとすい臓は血糖値維持のために多くのインスリンを分泌しようとします。これはすい臓にとって大きな負担となります。このような状態が続き、すい臓の疲労が蓄積していくと、インスリンの分泌そのものが弱まっていき、食事によって上昇した分の血糖を処理できない状態になっていきます。これが糖尿病へと進行していく基本的なメカニズムです。

 まとめると、食事で糖質を摂る→インスリンが分泌→余った糖質は脂肪へ→肥満になる→肥満になるとインスリンの効きが悪くなり、さらに量を出そうとするため、すい臓が疲弊する→すい臓が壊れる→糖尿病へということになります。

■肥満と糖尿病の合併症

 繰り返しになりますが、肥満になり脂肪が溜まるとインスリンの効きが悪くなります。そうするとすい臓は多くのインスリンを分泌させる必要があり、疲弊していきます。ですから、肥満と糖尿病は相互作用的に症状を進行させていくわけです。

 特に、先にも触れたインスリン抵抗性の問題は、特定健診等で行われる検査ではわからないものですから、空腹時血糖が高いという形で判定される(慢性的な高血糖が進行し始める)まで放置しがちになってしまいますので特に注意しなければなりません。

 また、糖尿病患者にとって肥満は、合併症のリスクとの関係でも緊急に改善されなければならない問題です。糖尿病は、その名前こそ糖「尿」病であるわけですが、その実態は「血管の病気」といっても良いものです。例えば三大合併症の一つ、糖尿病性腎症は血管が損傷することにより起こります。詳しくは「糖尿病性腎症とはどんな病気なのか。放っておくと人工透析へ」をお読みください。

糖尿病は、慢性的な高血糖となる病気のことですが、この高血糖が引き金となって、さまざまな合併症を引き起こします。糖尿病性腎症と呼ばれる病気もこのひとつで、糖尿病の三大合併症のひとつとされています。これは高血糖により腎臓内の糸球体(老廃物の濾過機能)の毛細血管が損傷し腎機能が低下することにより発症します。

 では肥満と血管にはどんな関係があるのかを見ていきましょう。

 肥満は中性脂肪が多い状態ですから、血中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が過剰になりがちです。この過剰なLDLが、「酸化」をすることで、酸化LDLになり、血管を傷付けます。そうすると最終的には動脈硬化を促進させます。また、LDLは酸化だけではなく、「糖化」もします。LDLが糖化した場合にも、血管内に蓄積され動脈硬化の原因となります。

[補足]
 肥満の多くの人が該当するメタボリックシンドロームは、①高血糖、②内臓性脂肪肥満、③高中性脂肪血症、④低コレステロール血症、⑤高血圧のうちの3つの症状のある場合をいいます。これらの症状は動脈硬化の危険因子とほぼ重なりますから、メタボであることそれ自体が既に動脈硬化のリスクを高めていることになります。

■肥満予防は糖尿病予防

 これまで述べてきたように、肥満と糖尿病は、その原因においても症状の進行についても深くつながっています。ですから、肥満の予防・解消はそのまま糖尿病の予防・治療ということになります。

 血糖コントロールの問題も、早期に対応すれば、早期の回復がみこまれますので、「まだまだ大丈夫」ではなく、「もう危ない」との認識で、これ以上肥満とならないように、あるいは、肥満を解消するために、生活習慣(食事と運動)の改善に気を配ることがとても大切です。

[参考記事]
「糖尿病性腎症とはどんな病気なのか。放っておくと人工透析へ」

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