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なぜ運動をすると血糖値が下がり糖尿病に効果があるのか

 

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はじめに 糖尿病とその治療法

 糖尿病は、簡単にいえば、血液中のブトウ糖の濃度が高すぎる病気です。これは、血糖コントロールに重要な役割を果たしているすい臓から分泌されるインスリンというホルモンの分泌が不足していたり、分泌のタイミングが悪かったり、分泌していてもその働きが弱いといったことが原因です。

 糖尿病の治療あるいは予防には、(1)運動、(2)食事が非常に大切です。運動と食事による改善が不十分な場合や、発覚時の症状が重篤なときには(3)薬物(血糖値降下薬やインスリン製剤)による治療が行われます。

糖尿病の治療・予防に「運動」はなぜ重要なのか

 それでは、糖尿病の治療・予防に運動が重要なのはなぜなのでしょうか。糖尿病というのは慢性的な高血糖の状態であるわけですから、わかりやすくいえば「摂取した糖を持て余している」状態ということができます。この持て余した糖を消費するために、そして糖を消費しやすい体にするために運動が重要となるのです。

(1)運動による糖の消費
 これは当然のことですが、運動時には非運動時に比べて多くのエネルギーを必要とします。糖はこの際のエネルギーとなるものですから、運動をすることで筋肉などが多くのエネルギーを必要とすることになり、その分だけ糖の代謝が活発となり血糖降下作用が認められるようになります。


(2)インスリン抵抗性の改善
 運動によって糖だけではなく脂肪の代謝も促進されることで、肥満が解消されていきます。中性脂肪が増えると細胞の表面にあるインシュリン受容体が減ってしまうことから、インスリンの作用が低下することによって血糖値が下がりにくくなってしまいます。このことをインスリン抵抗性が高くなるといいます。

 運動によって脂肪の代謝が促進させるということは、これとは逆の作用であるわけですから、運動によって血糖値の下がりやすい体になっていくのです(インスリンの抵抗性が改善されるといいます)。

 さらに、運動、特に筋力トレーニングによって筋肉量を増やすことで基礎代謝が高まります。基礎代謝が高まるということは、必要となるエネルギー量が増えるということですから、その分だけ糖を持て余しにくく(血糖値が上がりづらく)なります。筋肉は食後に上昇した血糖を取り込んでくれる非常に重要な存在です。また筋肉細胞が増えるということは、インスリン受容体が増えることにもつながりますから、こちらも血糖値抑制に大きな効果が見込まれるのです。

糖尿病の治療・予防に必要な運動

 それでは糖尿病の治療としては、具体的にどのような運動をどの程度行えば良いのでしょうか。以下、簡単にまとめてみます。

(1)運動の頻度
 私たちは日々食事をすることにより糖を摂取しています。ですから、血糖コントロールは日常の問題です。したがって、当然に運動も毎日行われるべきと考えるのが基本でしょう。運動は3日以上中断するとその効果が消失するとよくいわれますから、できるだけ毎日、少なくとも週3日以上は運動を行うようにするべきでしょう。食事療法もそうですが、運動も「続けること」が何よりも大切なのです。

(2)運動の時間
 一般的には20~60分程の運動がよく推奨されています。特に運動による脂肪燃焼を促進させようという観点(脂肪分解酵素を活性化させるため)や、一定以上のカロリー(エネルギー)消費の観点からは、運動量を確保するためにも一定以上の時間をかけた運動であることが推奨されることになります。

 しかし、そうだからといって、それよりも短い時間の運動が無意味なのかといえばそうではありません。大切なのは一度にたくさん運動することよりも、日々継続して運動することです。仮に5分、10分のウォーキングに過ぎなくても、そのときにできる運動をするということが、血糖コントロールの観点からは特に重要であるといえます。

(3)運動の種類・強度
 糖尿病の治療、予防のための運動としては、有酸素運動とレジスタンス運動とがあります。

①有酸素運動
 有酸素運動とは、ウォーキング、ジョギングといった、特に下半身等の大きな筋肉群を使い、継続して運動を行うことを言います。最も取り組みやすいウォーキングであれば、60分のウォーキングでおおよそ200kcal程度を消費するといわれます。

 また、有酸素運動は、脂肪の燃焼に効果的であるほか、糖の代謝も促進させます。この有酸素運動を中程度(ややきつい程度)に行うことが、糖尿病の治療、予防の運動としてはよく推奨されています。ウォーキングであれば、やや早足で歩くというイメージです。

②レジスタンス運動
 レジスタンスとは筋肉に負荷をかける運動です。わかりやすく言えば、腕立て伏せなどの筋トレのことです。基本的にはそれぞれの動作を10~20回ほど反復することを1セットとし、それを1~3セットほどの無理のない範囲で行うことが推奨されます。

 筋力トレーニングは無酸素運動ですが、これも糖の代謝を促進させます。また、筋肉量が増えることは、基礎代謝の増加にもつながりますから、糖を使用量を上げる効果をもたらすことになります。それにより血糖値もコントロールも行いやすくなります。

 先の有酸素運動は、その運動例からもわかるように下半身の筋肉へのアプローチが中心で上半身へのアプローチは比較的少なめです。全体のバランスという観点では有酸素運動に加えて上半身の筋力トレーニング(無酸素運動)を行うという方法がよさそうです。

普段の活動量を増やす努力を

 糖尿病は生活習慣病とされますが、これは言い換えれば生活が豊か(便利)になってきたことのツケであるともいえるわけです。私たちの食事には砂糖、白米など精製されたものが増え、様々な生活上の活動は機械(たとえば洗濯機、エレベーターにエスカレーターなど)が代わりに行うようになり、摂取エネルギーは増える傾向に、消費エネルギーは減る傾向にあるわけです。

 その意味でも、できる限り、車、エレベーターやエスカレーターの利用は避ける、近所の買い物へは自動車や自転車ではなく徒歩で行くといったような、小さな取り組みの積み重ねも大切です。たとえば、小さなお子さんをお持ちの方であれば、子供と公園等で遊ぶ時間を増やすことも、生活活動量を増やすことにつながるのです。

運動だけではなく食事もセットに

 ここまで糖尿病の治療としての運動療法についてお話ししてきました。簡単にまとめると、運動は糖を積極的に消費し、さらに糖を消費しやすい体になる(体を維持する)ために非常に重要であるということです。

 ただ、運動だけでは、血糖値のコントロールを達成するのは難しい場合も少なくありません。例えきちんと運動をしても、今まで通り糖質の多い食事をしていては効果は半減します。ですから、運動療法は食事療法と併せて実践されることが大切なのです。

[参考記事]
「糖尿病の食事療法であるカロリー制限食と糖質制限食について」

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