これから糖尿病の基本である「糖尿病とは」から始まり、血糖値、糖尿病になる理由、糖尿病の種類、基準値、自覚症状、合併症、予防策について詳しく説明していきます。糖尿病という病気をよく理解することで予防にも力が入ることでしょう。
●糖尿病とは?
簡単に言うと、血糖値のコントロールがうまく出来ず、血糖値の高い状態がずっと続いている状態のことです。本来なら、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンによって血液中の糖は調節されます。
しかし、それが上手くいかず血糖が高すぎる状態が続くと糖尿病と診断されます。血糖値が高くなる原因は以後説明をしていきますが、成人してから罹るタイプ(2型糖尿病)は生活習慣の影響が大きいです。糖尿病になってしまったら、治すというよりも生活習慣を見直して上手にコントロールしながら付き合っていく病気です。
●血糖値とは?
食べ物には、糖質というエネルギーの元になる成分が含まれています。糖質が消化吸収されると、グルコースという糖の形で血液中を運ばれていき、肝臓や筋肉に蓄えられたり、脳や筋肉でエネルギー源として使われます。この血液中の糖(血糖)の量が血糖値です。
そして、その糖をエネルギーとして使えるように細胞に取り込ませる役割を担っているのが膵臓から出されるインスリンというホルモンです。
例を挙げて説明しましょう。お腹が空いておにぎりを食べたとします。おにぎりが消化吸収され、糖が血液中に増えます。すると、膵臓からインスリンが出され、細胞は血液中から糖を取り込みます。
取り込まれた糖はエネルギー源になったり、蓄えられたりします。そしてまた、血液中に糖が少なくなってくると空腹を感じて、次のエネルギー補給をするよう促されるわけです。空腹のタイミングで食事が出来なくても、蓄えられた糖が供給され、血糖値を上げたりエネルギーが供給されたり、正常な状態を保つことが出来ます。
また、血糖値は高すぎるのもよくありませんが、低すぎるのも危険です。糖は脳や臓器などを動かすエネルギー源なので、なくてはなりません。低血糖、つまり低すぎると震え、頭痛などが現れ、ひどくなるとけいれんや昏睡を起こし、命の危険にもつながります。
糖尿病の基準値
先ほど「血液中の糖(血糖)の量が血糖値」と言いましたが、どれだけ血中に糖があるかで、「正常型(正常の状態)」「境界型」「糖尿病型」に分かれます。「境界型」とは文字通り、「正常型と糖尿病型の間。今のところ糖尿病ではないけど、もう少しで糖尿病になりますよ」という意味です。
まずは「正常型」ですが、これは糖尿病ではない通常の状態です。基準は以下の引用内にありますが、この数値が「正常である状態」です。以下の基準にある「HbAlc値」とは聞きなれない名前ですが、これは1か月から2か月までの血糖値の平均です。
血糖値はその日、何を食べたのかで違ってきてしまいますが、HbAlc値は検査直前に何を食べたのかに影響を受けません。ですので、血糖値と合わせて判断すると正確な血糖値の状態を把握することができます。
「正常型」の血糖値やHbAlc値の基準値は以下の通りです。
[正常型]
①空腹時血糖値
=>110mg/dl未満
②食後2時間血糖値(75g経口ブトウ糖負荷試験で判定)
=>140mg/dl未満③HbAlc値
=>5.6から5.9%
「糖尿病型」の基準値は以下の数値です。
[糖尿病]
①早朝空腹時血糖値
=>126mg/dl以上
②食後2時間血糖値(75g経口ブトウ糖負荷試験で判定)
=>200mg/dl以上
③HbAlc値
=>6.5%以上
「境界型」の基準値は以下の数値です。
[境界型]
①空腹時血糖値
=>110mg/dL~125mg/dl
②食後2時間血糖値(75g経口ブトウ糖負荷試験で判定)
=>140mg/dl~199mg/dl③HbA1c値 6.0%から6.4%
●糖尿病の種類
①1型糖尿病
→インスリンが出なくなる(インスリンの分泌障害)ことで起こります。主に小児~青年に、原因不明で突発することがあります。糖尿病患者の約5%と言われています。
②2型糖尿病
→インスリンが作用しにくくなる、または量が少ないことで起こります。主に中高年になってから発症しますが、最近では子供でも肥満から2型糖尿病になるケースも…。
2型糖尿病になる要因は肥満、糖質の摂りすぎ、運動を全くしない、他にも遺伝が関係しています。肥満になると内臓に脂肪が増えますが、これがインスリンの効きを悪くします。これを「インスリン抵抗性」と言います。また遺伝により元々インスリンの量が少ない人もいます。そうすると血糖値が正常値に下がりにくくなり2型糖尿病になりやすくなります。
●糖尿病の自覚症状は?
①血糖値が高い状態が続くとその濃度を薄めようとして水分を欲するようになり、のどの渇き(口渇)を感じ、水分を沢山摂るようになります。「糖尿病になったら、喉が渇くよ」はよく言われることなので、ご存知の方も多いかもしれませんね。そして、その分、おしっこも多く出るようになります。
②先ほどお伝えしたインスリン抵抗性により、エネルギーとして糖を取り込めない状態が続いてしまうため体重が減ってきます。最初は肥満で太っていますが、徐々に痩せてくるという病気らしい現象が起こってきます。
●糖尿病の合併症
自覚症状は感じにくいのですが、じわじわと血管にダメージを与えるところに糖尿病の怖さがあります。細い血管、太い血管両方に症状が出やすいのです。
具体的には、細い血管に起こる症状として
①腎症:腎臓の中の血管がダメージを受け、腎臓の働きが低下します。腎臓の働きが悪くなると最終的には人工透析により治療を行います。
②網膜症:目の細い血管がダメージを受け、視力が落ちたり霞んだりします。進行すれば失明の危険もあるので注意が必要です。
③神経障害:手足の先の血管がダメージを受け、しびれや痛み、感覚が鈍ります。怪我したことに気づかず、放っておいて壊死してしまい、足や手を切断しなければならないケースもあります。
これらは3大合併症と言われています。
大きい血管に起こる症状として
〇動脈硬化により血管が詰まりやすくなり、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの原因にもなります。
どちらにせよ、血管のダメージが進行していくと命に関わったり、障害が残る病気につながってしまいます。
●体格指数と標準体重を知る
2型糖尿病に関しては生活習慣が深く関係しているので、まずは生活習慣を見直してみることが予防にも治療にもつながります。
先ほども書きましたが、肥満は糖尿病の大きな原因となります。成人の場合、BMI(体格指数)という肥満の目安となる指標があります。これは体重(㎏)を身長(m)で2回割ると算出できます。
身長(m)÷ 体重(㎏)÷ 体重(㎏)
算出された数字が
18.5未満:やせ
18.5~24.9:標準
25以上:肥満
と判断されます。
例えば、175㎝で80㎏の人の場合、80㎏÷1.75m÷1.75m=26.1となるので、この人は肥満と判断されるわけです。
そして身長に対しての標準体重は
身長(m)×身長(m)×22
で算出できます。
先ほどの175㎝の人の場合、1.75m×1.75m×22=67.3㎏となります。肥満の方はここで算出された標準体重を目指すと良いでしょう。何も糖尿病だけの話ではなく、他の病気の予防にもなりますので、体重の管理だけは日ごろから行いましょう。
糖尿病を予防するには糖質量を少なくする
糖尿病を予防するには糖質の摂取量に気を付けることです。糖質といってもお菓子やケーキだけのことを言っているわけではありません。我々が普段食べている中で一番の糖質源はお米、パン、麺類です。
この3つの食品を減らすことから始めましょう。さらには余裕が出てきたら、ジャガイモやサツマイモなどのイモ類、そしてかぼちゃやゴボウなどの野菜も糖質が多いので、控えるか、量を減らすなどの対処をしてください。
一般的な日本人は1日に300g前後の糖質量を摂っていますので、これをまずは半分にしましょう。お米であれば小茶碗に1杯程度で抑えてください。
また、お米などの糖質の多い食品を食べる前に野菜を食べることで、血糖値の上がり方が緩やかになり、インスリンの過剰な分泌を抑えることが出来ます。また、食物繊維自体にも血糖値を上げにくくする作用があるので、糖尿病対策には積極的に取り入れ、野菜や海藻を毎食食べるようにしてください。
糖尿病を予防するには運動量を増やす
糖尿病を予防する方法として運動を挙げることができます。運動することで先ほど説明したインスリン抵抗性を改善する効果があることが分かっています。激しい運動よりもウォーキング程度の軽い負荷のかかる動きの方が効果が高いです。激しい運動をすると血糖値が上がりやすくなりますので、ほどほどに。
ウォーキングをする時間が取れればそれに越したことはないのですが、時間がないのが現実。そういうときは、日常生活で活動量を増やします。地道ではありますが、例えば、エレベーターではなく階段を使ったり、一駅前で降りて歩くなどをするといいでしょう。30分くらいの運動でも効果が出ますので、ぜひ継続して運動してください。
最後に
食事面、運動面ともに無理をせず、ちょとづつ挑戦しましょう。気付いたら習慣になっている頃には、身体の状態は変わっていることでしょう。罹ってしまったら怖い糖尿病。合併症も発症して、目が失明したり、足を切断したりも十分あり得る話です。予防や治療のために、生活習慣を見直すところから始めましょう。
[参考記事]
「糖質制限食(低炭水化物食)における糖質1日の必要量」
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