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糖尿病を発症したくなければ脂肪を減らしなさい

 

 糖尿病の発症には脂肪が大きく関わっています。何でも機械がやってくれる現代では運動する機会が失われ、脂肪の蓄積が大きくなります。

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はじめに

 糖尿病の患者数は、年々増加しており、今後さらに増加すると言われています。また、かつて糖尿病は、先進国の病気と考えられてきましたが、急速な都市化や食生活の変化によって、発展途上国でも患者数が急速に増加しています。

 「糖尿病」と聞くと、近代の病気と思う人も多いと思いますが、実はその歴史は古く、紀元前1550年頃まで遡ります。当時の古代エジプト医学について書かれた医学書の中には、既に糖尿病を連想される記述が見られます。また、平安時代の貴族、藤原道長は日本最古の糖尿病患者と言われています。

 このように3600年以上も前から私たちの健康を脅かしている糖尿病は、一体どのように発症するのでしょうか?今回はその過程について説明していきます。

糖尿病とは

 糖尿病とは、一言で言うと、「血液中の糖(グルコース)が多くなりすぎる病気」です。グルコースは私たちが生きていく上で最も必要な栄養分ですが、多すぎても少なすぎても良くありません。このため、血液中のグルコースの量(血糖値)は常に70mg/dl〜100mg/dlの間になるよう、厳密に調節されています。この調節に重要な役割を果たしているのが、ホルモンです。

 食後、血糖値が上昇すると、インスリンというホルモンが分泌されます。インスリンは細胞内へグルコースを取り込ませることで、血糖値を低下させます。細胞内に取り込まれたグルコースは、エネルギーへと変換されたり、貯蔵できる形に変えて細胞内に蓄えられたりします。一方、空腹時など血糖値が低下している時は、グルカゴンアドレナリンというホルモンが分泌されます。これらのホルモンは、細胞内に蓄えられていたエネルギーからグルコースを作り出し、血液中に放出することで血糖値を上昇させます。

 糖尿病は、これらのホルモンが適切に働かなくなることで発症します。特に、インスリンは血糖値を低下させる唯一のホルモンのため、インスリンの働きの異常は、より深刻な問題となっています。

1型糖尿病

 糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病に大別されます。1型糖尿病は小児で発症することが多く、その患者数は全糖尿病患者数の10%程度です。1型糖尿病では、インスリンを分泌する膵臓のランゲルハンス島β細胞が破壊され、インスリンが分泌されなくなります。

 β細胞の破壊には、自己免疫系の異常が関わっていると言われています。私たちの体には、異物を認識し排除する能力が備わっています。しかし、何らかの理由で、β細胞を異物とみなし攻撃してしまうのです。残念ながら、なぜβ細胞を異物とみなしてしまうのかについては、わかっていません。

 1型糖尿病では、インスリンが全く分泌されないので、必ずインスリンを注射しなければなりません。そのため、「インスリン依存型糖尿病」とも呼ばれます。

2型糖尿病

 2型糖尿病の患者数は全糖尿病患者数の90%にものぼります。2型糖尿病では、インスリンが分泌されているにも関わらず、細胞はグルコースを取り込むことができず、血糖値が高い状態が続きます。このような状態を「インスリン抵抗性」といいます。

 すると、β細胞はインスリンが不足していると勘違いし、更にインスリンを分泌します。そのため、2型糖尿病の初期では、血中のインスリン濃度が高くなります。しかし、必要以上に働いたβ細胞はどんどん疲弊していき、最終的にインスリン分泌が減少します。1型糖尿病が「インスリン依存型糖尿病」と呼ばれるのに対し、2型糖尿病はインスリンが全く分泌できないわけではないので、「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれます。

 しかし、なぜインスリン抵抗性が起こってしまうのでしょうか?それには、食習慣や運動習慣といった生活習慣が関与しています。糖質摂取の増加、自家用車や公共交通機関の普及、日常生活のオートメーション化によってエネルギー摂取がエネルギー消費を上回ると、エネルギー収支のバランスが崩れ、余分なエネルギーは脂肪として蓄積します。この脂肪がインスリン抵抗性に関わっているのです。

 脂肪と聞くと、悪いイメージを持っている人が多いと思いますが、実は適量の脂肪は私たちの体に良い働きをしてくれます。上でも説明しましたが、空腹時など血糖値が低下している時は、貯蔵エネルギーからグルコースを作り出し、血液中に放出します。脂肪はその重要なエネルギー貯蔵庫なのです。また、適量の脂肪からは、インスリンの効きを良くしたり、摂食を抑えたりするホルモンが分泌されます。

 しかし脂肪が過剰に蓄積し、肥満(特に内臓脂肪蓄積型肥満)になると、肥大した脂肪細胞からインスリンの効きを悪くするホルモンが分泌され、インスリン抵抗性を発症してしまいます。

 肥満(脂肪)は糖尿病だけでなく、高血圧や動脈硬化の発症にも大きな影響を与えていることが報告されています。肥満を解消することが、健康への第一歩と言えるでしょう。もちろん、糖尿病の発症の原因は肥満だけではなく、遺伝的な要素もありますが、意識してコントロールができるのは肥満予防だけです。

おわりに

 糖尿病そのものは自覚症状があまり無いため放置されがちですが、そのままにしておくと深刻な合併症を引き起こします。糖尿病が原因で失明した、人工透析をしなければならなくなった、足を切断しなければならなくなった、という話を聞いたことがある人もいるかもしれません。

 このような合併症を発症してしまうと、私たちの生活の質(QOL)は著しく低下してしまいます。糖尿病を発症しないために、また発症しても進行を防ぐために、日頃から適度な運動やバランスの良い食事を心がけることが大切です。

[参考記事]
「糖尿病は遺伝するかどうかを解説します」

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