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糖尿病の基準値について。どんな状態が糖尿病なのか

 

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■血糖コントロール判定の評価区分

 糖尿病は上昇した血糖を代謝しきれない(血糖値を下げられない)ことが原因です。糖尿病の判定は、血糖値(空腹時血糖・食後血糖)とHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)の値を評価することによって決められることが一般的です。血糖値は、血液1dLあたりのブドウ糖量のことで、採血時の血糖状態を測定するもので、HbA1cは、血中のグリコヘモグロビンという物質の割合を示すもので、これは過去1~2ヶ月程度の血糖値の状態を測定するために用いられます。

 これらの検査による血糖状態の評価は、その状態に応じて、①正常型、②糖尿病型、③境界型の3つに区分されます。

■正常値とその基準値

 正常型とは、血糖コントロールに問題がないとされる状態のことをいいます。正常型の基準値は下記のとおりです。

①空腹時血糖値・・・110mg/dL未満(※100~109mg/dL=正常高値)
②食後2時間血糖値・・・140 mg/dL未満
③HbA1c・・・5.6~5.9%

 ところで、空腹時血糖が100~109mg/dLの人の場合には、「正常」ではなく「正常(高値)」という判定が出ます。この正常高値というのは、2008年からわが国でも導入された新しい区分です。アメリカ糖尿病学会が、2003年に、空腹時血糖だけの検査では食後高血糖を早期に発見できないことから、空腹時血糖の正常上限を110mg/dLから100mg/dLへと基準値を引き下げたことを受けての対応です。

 実際にも、この正常高値に区分される方の多くには、食後高血糖が生じている方が多いことも明らかになっています。食後高血糖の状態にあるということは、グルコーススパイクという危険な症状も併せて生じていることになりますから、正常高値と判定された人は、「高いけど正常値だから大丈夫」と安心すべきではありません。グルコーススパイクとはインスリンの作用により高血糖の状態から急激に低血糖へと落ちていく現象を言います。グルコーススパイクが起きると血管が傷付き、動脈硬化の原因になりますので、糖尿病と判定されていない人でも注意が必要です。

■糖尿病型とその基準値

 糖尿病型とは、血糖コントロールに問題がある(不良とされる)場合で、将来、糖尿病合併症を発症する可能性が高いとされる状態のことです。検査で1度、糖尿病型と判定されただけでは、原則としては糖尿病とは診断されません(ただし下記①と③が同時に認められる場合には、1度の検査で糖尿病と診断されることもあります)が、再度の検査でも糖尿病型との判定が出たときには糖尿病と診断されます。糖尿病型の基準値は下記のとおりです。

①空腹時血糖値 ・・・126mg/dL以上
②食後2時間血糖値・・・200 mg/dL以上
③HbA1c・・・ 6.5%以上

■境界型とその基準値

 血糖コントロールの状態は、正常型でもなければ、糖尿病型でもない場合の評価区分となります。境界型というのは、現状では糖尿病とはいえないが、「将来糖尿病となる可能性が高い状態」であると判定になります。いわゆる糖尿病予備群と呼ばれるものは、ここに分類されます。境界型の基準値は下記のとおりです。

 ①空腹時血糖値 ・・・110~125mg/dL
 ②食後2時間血糖値・・・140~199 mg/dL
 ③HbA1c ・・・6.0~6.4%

 境界型の段階は、当然に、正常高値の場合よりも血糖コントロールの異常が進行しているということになります。正常高値(100~109mg/dL)の段階であっても「警戒するべき」なのですから、境界型と判定されるということは、食後高血糖が慢性高血糖へと進行を始めた段階であるということです。ですので、もはや「まだ『糖尿病予備軍』だから」と言っていられる状況ではないのです。

■基準値の根拠

 これらの基準値は、血糖状態による合併症発生の蓋然性、すなわち「どの程度の高血糖となると合併症を発症するのか」という観点から定められています。これをおおざっぱに整理すれば、正常型では「合併症の心配はなく」、境界型では「将来合併症を発症する可能性がないとは言い切れない」、糖尿病型では「合併症発生を防ぐために早急に血糖コントロールを改善しなければならない」と言うことができるでしょう。

 糖尿病三大合併症の1つである糖尿病性網膜症は、空腹時血糖が140mg/dL、食後2時間血糖値が230mg/dL、HbA1cが6.9%を超えるとその発症リスクが著しく増加することが知られています。糖尿病という診断をすることの目的が合併症の予防である以上、血糖値が危険水域(上記のような状態)に達する前に、早期に治療(=合併症予防のための高血糖改善)を開始することが重要です。

[参考記事]
「グルコーススパイク(血糖値の急上昇と急低下)とは」

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