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糖尿病の合併症の糖尿病性網膜症について。年間3000人が失明

 

 今回は糖尿病の三大合併症の一つである糖尿病性網膜症について説明します。

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はじめに

 血液中のグルコースの量(血糖値)は、様々なホルモンの働きによって一定の範囲内に収まるように調節されていますが、糖尿病ではこの調節機能が上手く働かず、血糖値が高くなってしまいます。

 糖尿病は自覚症状がほとんど無く放置されがちですが、そのままにしておくと深刻な合併症を引き起こします。網膜症、腎症、神経障害は、糖尿病の三大合併症と言われています。

 糖尿病性網膜症は糖尿病発症の数年後から徐々に進行し、最終的に失明する可能性のある病気で、年間3000人もの人が糖尿病性網膜症によって失明していることが報告されています。失明の原因疾患では緑内障に続き第2位に位置しています。今回は、糖尿病性網膜症がどのように発症するかについて説明していきます。

網膜の構造と働き

 眼は多くの器官で構成されており、物の色や形を認識するために働いています。網膜は、眼の奥の眼底というところにあり、薄い膜状の構造をしています。

 私たちは「眼で物を見ている」と感じていますが、実際は物そのものではなく、物に当たって反射した光を見ています。反射した光が眼に届くと水晶体で屈折し、硝子体を通って網膜まで進み、網膜上で光の像を描きます。

 網膜はこの光の情報を神経信号へ変換し、視神経を通じて脳へ伝達します。脳は伝達されてきた信号をもとに形や色、明るさなどを分析し、その結果、私たちは「眼で物を見た」と認識することができるのです。

糖尿病性網膜症の原因と症状

 ではなぜ、糖尿病になると網膜に症状が現れるのでしょうか。それは、糖尿病による血糖値の上昇と、網膜を通る血管の太さが関係しています。糖は、私たちが生きていくうえで最も必要とするエネルギー源なのですが、量が多くなりすぎると血管を傷つける働きも持っています。この現象は糖毒性と呼ばれ、細い血管ほど影響を受けやすい傾向にあります。網膜には毛細血管と呼ばれる非常に細い血管が密集しているため、糖毒性の影響を受けて簡単に傷ついてしまいます。

 傷ついた血管は流れが悪くなり、じゅうぶんな酸素や栄養を運べなくなります。すると、新たな血管(新生血管)を作って不足分を補おうとします。しかし、新生血管は切れやすく、すぐ出血してしまいます。出血が起こると、それを修復するために増殖膜と呼ばれる線維性の膜が作られるのですが、この増殖膜は収縮作用を持っています。それゆえ、網膜を一緒に引っ張ってしまうことで、網膜が剥がれてしまいます(網膜剥離)。この出血や網膜剥離が視力低下や、最悪の場合は失明を引き起こします。

 網膜症の初期では、血糖値のコントロールによって病態が改善されることもありますが、進行するにつれ、治療しても視力が元に戻る可能性は低くなっていきます。また網膜の中心には、黄斑と呼ばれる視力に大きな影響を与えている部位があります。発症初期であっても、この黄斑が損傷されると、視力は急速に低下してしまいます。

治療法

 糖尿病性網膜症は、最大の原因である高血糖を改善しない限り、どのような治療を行っても再発してしまいます。血糖値のコントロールがうまくできず症状が進行してしまった場合には、網膜光凝固術や硝子体手術を行います。

 網膜光凝固術では、酸素不足になっている網膜をレーザーで凝固させ、新生血管が作られるのを防ぎます。硝子体手術では、眼に小さな孔を開けて、出血部位や増殖膜を取り除いたり、剥がれた網膜を元に戻したりします。

 しかし、これらは、症状が今より悪くならないようにするために行われる治療法です。失われた視力が元の状態まで回復できるわけではありません。

おわりに

 糖尿病性網膜症は進行してしまうと、いくら治療しても元の状態に戻すことはできません。視覚は五感の中で最も発達しており、五感で入手する情報の約80%が眼からの情報と言われています。失明してしまったら、私たちの生活は非常に不便になります。

 そうならないためにも、糖尿病と診断されたら症状の有無に関わらず定期的に眼科へ行き、眼底検査を行うことが大切です。眼底は唯一血管を直接見ることができる部位なので、糖尿病性網膜症だけでなく、緑内障や動脈硬化などの生活習慣病の発見にも効果的です。

 しかし、何よりも大切なことは、血糖値を上手にコントロールすることです。血糖値をコントロールできれば、その他の合併症の進行も予防することができます。糖尿病になってからではなく、なる前から日々の食習慣や運動習慣を見直し、健康的な生活を心がけましょう。

[参考記事]
「糖尿病性腎症とはどんな病気なのか。放っておくと人工透析へ」

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