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糖尿病の合併症である糖尿病性網膜症の解説。視力低下は起こるの?

 

 糖尿病性網膜症って聞きなれないとなんだか長い難しい病名ですが、簡単に言い換えると糖尿病を原因とする目の病気(糖尿病の合併症)です。目の中でも網膜と呼ばれる場所の病気になります。私たちは網膜で色を感じたり、光を感じたり物を見ているのです。

 その網膜には細かい血管が伸びていてその血管からは酸素や栄養が送られています。血糖値が高い状態が続くことによりこの血管が障害を受けて、栄養や酸素の供給がうまくいかなくなり、網膜の状態が悪くなってしまう、これが糖尿病性網膜症です。

 この後、段階ごとに糖尿病性網膜症について解説していきます。

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糖尿病性網膜症、すぐ目が見えなくなる?

 糖尿病性網膜症は自覚症状がないまま徐々に進んでいきます。それもほとんど血糖値のコントロールがあまり良くない状態が数年〜10年単位で続いた場合です。そして、糖尿病性網膜症、すぐに目が見えなくなる?の答えはNOです。

では、どんな風に進んで行くの?

 血糖値が高いと細かい血管から障害を受けていきます。その障害されやすい血管の一つが目の内側にある網膜の血管です。その血管から出血した点状の跡を点状出血と言います。また、栄養や酸素不足になることで網膜に所々白く抜けたような部分が出てきます。それを白斑と呼びます。そして、その点状出血や白斑などが網膜に認めらると初めて網膜症と診断されます。この段階は単純性網膜症と呼ばれます。糖尿病網膜症の第1段階と言えます。ではこの段階で視力が落ちることはあるのか?というと全く変わりません。ほとんどが無症状です。

 第2段階を増殖前網膜症と呼びますが、これは障害された血管の働きを補うために生まれる赤ちゃん血管がたくさん増殖する前段階です(この新しく生えてくる赤ちゃん血管を新生血管と呼びます)。つまり、新生血管が増える準備段階です。だんだんと障害された網膜の血管が詰まり、網膜に虚血(血液不足)の部分が現れてきます。その症状として白く抜けて見える軟性白斑や、血管成分が染み出すことによってできる網膜浮腫などがあります。この段階ではまだあまり視力が落ちることはありません。ただし、網膜の中でも黄斑と言われる一番ものを見ている部分に浮腫などの症状が出ると視力が落ちることがあります。

 3段階目は増殖網膜症と呼ばれ新生血管が増え、網膜の虚血部分も増えます。新生血管が破れると目の中に出血をしたり、新生血管が増えることで網膜剥離を起こしたりします。3段階目になると視力が落ちることが多くなります。

糖尿病性網膜症の治療は?

 糖尿病性網膜症は新生血管の増殖を抑えるためのレーザー光凝固療法や、硝子体出血や網膜剥離が起こってしまった時には硝子体手術を行います。黄斑浮腫が起こった場合には、薬剤を注射する方法やレーザー治療、硝子体手術が選択されることもあります。

糖尿病性網膜症を進行させないために

 血糖値をよくコントロールしておくことはとても大切です。そのために状態が安定していても内科の定期通院を続けましょう。中断してしまい、数年後、合併症が出現してから再受診し、大変な思いをしている患者さんも実際に少なくありません。

 また、糖尿病性網膜症は悪化しても自覚症状がないので、見えるから大丈夫!というのはとても危険です。血糖値のコントロール状態が良い人でも1年に1度は必ず眼科を受診しましょう。糖尿病性網膜症は初期の段階で適切に対処することで重症(視力の低下や失明)になることを防ぐことができます。

 そのためにも糖質の多い食品を摂り過ぎない、適度な運動をするなど血糖値の管理を徹底してください。糖尿病性網膜症の治療をしても、血糖値の状態が悪ければ進行は止まりません。最悪、失明してしまうほど怖い合併症です(年間3000人が糖尿病性網膜症で失明)。決して糖尿病を甘く見ずに、少し恐れるくらいがちょうどいいかと思います。

[参考記事]
「糖尿病性腎症とはどんな病気なのか。放っておくと人工透析へ」

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