糖尿病という言葉は、多くの人にとって身近な存在になりつつあります。厚生労働省のデータによれば、日本には糖尿病が強く疑われる人が1000万人以上存在し、さらに予備軍も合わせると2000万人に達するとされています。このような状況の中で、「家族に糖尿病患者がいる」ということは決して珍しいことではありません。
しかし、家族に糖尿病の人がいる場合、どのように接したらよいのか、自分自身への影響はあるのか、正しく理解している人は意外と少ないかもしれません。この文章では、糖尿病に関する基本的な知識と、家族としての向き合い方、そしてご自身の健康についても考えていただけるような内容をお伝えします。
糖尿病とはどんな病気か?
糖尿病は、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる病気です。主に「インスリン」と呼ばれるホルモンの分泌が不足するか、その働きがうまくいかなくなることで起こります。インスリンは、血液中の糖を細胞に取り込んでエネルギーに変える重要な役割を担っており、その機能が正常に働かないと、血糖値が高いままの状態が続きます。
糖尿病には主に以下の3つのタイプがあります:
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1型糖尿病:自己免疫の異常などにより、インスリンを作る膵臓の細胞が破壊される。若年で発症することが多い。
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2型糖尿病:インスリンの分泌量が不足したり、働きが悪くなったりして血糖が高くなる。中高年に多く、生活習慣の影響が大きい。
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妊娠糖尿病:妊娠中に初めて高血糖が認められるタイプ。出産後に正常に戻る場合もあるが、その後の2型糖尿病のリスクが高まる。
この中で最も多いのが2型糖尿病で、全体の90%以上を占めます。遺伝的要因と生活習慣の影響が大きいため、家族内に患者がいる場合、他の家族もリスクが高いといえます。
家族が糖尿病になると、自分にも関係あるの?
答えは「はい」です。糖尿病には遺伝的な傾向があるため、親や兄弟に患者がいる場合、ご自身も糖尿病になるリスクが高いことがわかっています。特に2型糖尿病は、家族性が強く、体質や食生活、運動習慣など、家庭内で共有される要素も影響します。
また、糖尿病は「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」とも呼ばれ、初期には自覚症状がないまま進行します。気づいたときには合併症が進んでいることも少なくありません。したがって、家族に糖尿病患者がいる場合、自分の血糖値や生活習慣に対する意識を高めることは、非常に重要です。
家族としてできるサポートとは?
糖尿病の治療は、食事療法・運動療法・薬物療法を中心に行われますが、これらを継続していくには家族の理解と支援が欠かせません。家族としてできるサポートには、以下のようなものがあります。
1. 食生活を一緒に見直す
糖尿病患者にとって最も重要なのが「食事療法」です。とはいえ、本人だけが制限された食事を続けるのは大きなストレスになります。家族全体で栄養バランスを考えた食事を心がけることで、本人のモチベーションも維持しやすくなりますし、同時に家族全員の健康にもつながります。
たとえば、野菜中心の献立、減塩、脂質の摂取を控える、食物繊維を意識してとる、ゆっくりよく噛んで食べるなど、基本的なポイントを家族全体で共有するだけでも大きな効果があります。
2. 一緒に運動をする
運動も血糖コントロールにとって非常に効果的です。しかし、1人で運動を続けるのは難しいもの。家族が一緒にウォーキングをしたり、ストレッチを取り入れたりすることで、運動が習慣化しやすくなります。
特に高齢の糖尿病患者の場合、運動が億劫になりがちですので、「一緒に散歩に行こう」と声をかけるだけでも励みになります。
3. 心のサポートを忘れない
糖尿病は慢性疾患であり、完治するものではありません。そのため、治療が長期にわたることにストレスを感じたり、気分が沈んだりする患者さんも少なくありません。そうした時に「甘いものを我慢してて偉いね」「検査結果、よく頑張ったね」といった一言が、心の支えになります。
逆に、「そんなに気をつける必要あるの?」「ちょっとくらい食べてもいいじゃない」といった言葉は、本人を苦しめることになります。無意識のうちに言ってしまわないよう、注意しましょう。
あなた自身の健康も見直すタイミング
家族に糖尿病患者がいるということは、自分自身の生活も見直すべきサインかもしれません。
以下のような項目に心当たりがある方は、一度健康診断や血糖値の検査を受けてみることをおすすめします:
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朝食を抜くことが多い
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間食や甘いものがやめられない
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外食やコンビニ食が多い
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運動不足を自覚している
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肥満傾向がある(BMI25以上)
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喉がよく渇く、頻尿、疲れやすい
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健康診断で「血糖値が高め」と言われたことがある
また、糖尿病予備軍と診断された場合も、生活習慣の改善で発症を防ぐことができます。「自分はまだ大丈夫」と思わずに、今できることから始めてみましょう。
まとめ:糖尿病は「家族の病気」として向き合おう
糖尿病は、本人だけでなく家族全体で向き合うべき「家族の病気」と言っても過言ではありません。家族の理解と支援は、患者さんの健康を守る大きな力になりますし、家族自身の健康を見直す機会にもなります。
「食事を一緒に見直す」「一緒に歩く」「一緒に検診を受ける」——そんな日常の積み重ねが、家族の健康を守る第一歩です。
あなたの大切な人と、そしてあなた自身の未来のために、今日からできることを始めてみませんか。
この文章は、医療専門家のアドバイスに代わるものではありません。心配な症状やご質問がある場合は、かかりつけ医や専門医に相談してください。
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